沽券について

 不動産業者として関係の深い土地の所有(権)について日本の歴史を少しばかり辿ってみたいと思います。 日本で土地の私有権が認められたのはかなり昔からだったようです。中学校の歴史で学んだように奈良時代の前期に「三世一身法」(723年)また聖武天皇の時代に「墾田永年私財法」(743年)などは土地私有を認めている証拠になります。 その土地に関して「沽券」と呼ばれるようになったのは平安時代に入ってからのようで、そもそも沽券とは「去り状」「避文」(さりぶみ)のことで、手許から離れることを表していたようです。それが土地を売買して所有権が移転する際に文書として「沽券(こけん)」を書いて、所有権が自分の手許から離れたことを証文として残したのが始まりで、後に「沽券」が土地の「権利証」のような扱いを受けたようです。 江戸時代になると東海道中膝栗毛に「沽券」は登場し、現代の「権利証」(不動産登記情報)と同様な扱いを受けていたようです。ただ当時は現代のような登記役所(法務局)がなかったため、土地を巡る争いは絶えなかったようです。 ちなみに「沽券に関わる」という言い方は体面や品位を汚すことに対する教示を示す言い方で、男性にだけ用いられていました。土地の所有権者の多くが男性だった当時の常識を反映したもののようです。

2018年02月23日