廃墟と化すマンション

 以前このブログで修繕積立金の不足でマンションが定期的な修繕ができなくなり、老朽化するのではないかと警鐘を鳴らしました。しかし現実は私の想像を超えてもっと悲惨なことになっているようです。

 普通マンションは新築から15年経てば外壁の補修が必要になり、三十年後にはエレベーターや上・下水の配管などの取り換えが必要になるようです。そうした修繕などがマンション購入者が管理組合に毎月積み立てた修繕積立金で賄えたとして(中には修繕積立金がマトモに全入居者が積み立ててないため修繕すら出来ないマンションもあるようです)もあるようです。

 しかしマンションが抱える最も問題は「建て替え」です。マンション(鉄筋コンクリート造の建物)の法定耐用年数は、1998年の税制改正によって47年と定められていますが、もちろん法定耐用年数(減価償却により現存価格が取得費の10%になる年数)がマンションの居住限界とはいえませんが、おおむね50年ないし60年でマンションは取り壊されているようです。

 ただ1981年を境に建築基準が変わり、旧耐震基準と新耐震基準ということになり(壁式工法除く)、1981年以前のマンションでは、コンクリートの性能から鉄筋の量、施工法などが異なっているため、大きな地震に対する耐力が現行基準の建物に比べると残念ながら低いといわざるを得ません。

 耐震構造を施して補強すれば耐震性がある程度は増すものの、それにより安全なマンションに変わるのかというとそうでもないようです。基本的な構造は何も変わらないため、あくまでも「補強」に過ぎないということにようです。

 そして何よりも問題なのは老朽化したマンションの「建て替え費用」です。つい数年前ですが、徳山駅ビルの建て替えのために旧駅ビルを解体撤去しました。その予算が当初は5000万円で計上されていたものが、夜間工事の中止や工期の関係などと様々な理由から解体撤去費用が嵩み、最終的に3億円を超えたのは論外としても、マンションの解体撤去にかなりの予算がかかることは想定しなければなりません。ちなみに宇部のグリーンホテル(徳山駅ビルの3倍ほどの規模の建物)の解体撤去費用は7000万円程度だったと聞いています。

 それほどの巨費をマンションの解体撤去に投じて、その跡地に同規模のマンションを建てることが出来る経済力を現マンション居住者が持っていれば何も問題ありませんが、そうでない場合は退去者の地上権と土地の共有持ち分を「建て替えマンションの入居者」で買い取らなければなりません。

 旧容積率で建てられたマンションなら建て替え時に増加した容積率分を旧マンションよりも多い戸数のマンションを建築して、増加した戸数の売却分を「建て替え」費用から差し引くことも可能です。しかし新・容積率で建てられたマンションは戸数が増加しないため、旧マンションの購入価格よりも「建て替え」費用の負担の方が高くなることを覚悟しなければなりません。

 そうしたハードルを越えて「建て替え」が合意できなければマンションは老朽化したまま放置され、やがては自然と「廃墟」にならざるを得なくなります。

 今後、飛躍的に居住耐用年数を超えるマンションが大量に出てくる時代を控えて、国は公的金融機関も巻き込んだ「マンション建て替え」制度や「建て替えファンド」などを用意する必要があるのではないでしょうか。若くしてマンションを購入された方も、高齢化に伴ってマンションの「建て替え」問題に直面することになります。

2018年10月16日